NPO団体「電子フロンティア財団」(EFF)公式HPより。
■EFFが「デジタルミレニアム著作権法」の修正を要求
サービスが終了したオンラインゲームをユーザーが自由にプレイできるように「デジタルミレニアム著作権法(DMCA)」の1201条を修正すべきであると著作権局に働きかけているのは、アメリカのNPO「電子フロンティア財団(以下、EFF)」である。
EFFとは、今後ますます進むネット社会の中で人々の自由を守るために1990年に設立された財団で、政府のネット検閲に反対し、言論の自由を守るための「ブルーリボン運動」を行っていることでも有名だ。このEFFの今回の主張の目的は、サービスが終了したゲームの”エミュレーターサーバー”設置を合法化することで、また文化財としてのゲームを保管することや、研究利用にも寄与するものだという。
情報化社会の中で、増え続ける一方だという権利の所在が不明な著作物、いわゆる「孤児著作物」の問題に取り組んだり、正当な理由があれば著作権者の許諾なく著作物を利用できるとする「フェアユース」の主張などの活動を行っているこのEFFだが、「The Register」の記事によれば、EFFはグーグルのスポンサードによって支えられているということだ。とすれば当然、”エミュレーターサーバー”の合法化は、グーグルの”意向”だとも受け取れるのだが……。
■両者一歩も退かないEFFとESA
しかし一方で、アメリカのゲーム業界団体はこの動きに真っ向から反対している。「The Daily Dot」の記事によれば、アメリカのビデオゲーム産業の業界団体「Entertainment Software Association(以下、ESA)」は「1201条の修正が海賊行為を助長するものにはならないとする充分な根拠がない」と異を唱えている。
これに対しEFFは「ESAは誤解している」と述べ、「サービス終了後でも一度購入したゲームを遊び続けられることは、ユーザーに許されたフェアネス(公正性)である」と反論し、一歩も退く様子がない。
しかしESAはアメリカ映画協会、アメリカレコード協会とチームを組み、1201条修正反対の共同声明を発表し、こちらも徹底抗戦の構えを見せている。「1201条の修正はハッキングが合法であるかのようなメッセージを与え、ゲーム産業を破壊に導くことにもなる」という感情的なニュアンスを帯びた発言も飛び出しているが、コンテンツ産業の側からしてみれば当然の反応だろう。
サービスが終了したオンラインゲームは、日本のゲーマーの間でも”エミュ鯖”や”プライベートサーバー”などを通して、それなりに楽しまれている実態がある。また、まだサービスが終了していないオンラインゲームでも”エミュレーターサーバー”が設けられ、友人同士などで楽しまれているケースもかなりの数存在しているといわれている。2012年には人気のオンラインゲーム『ラグナロクオンライン』の”エミュレーターサーバー”の運営者に対し初の摘発が行われたことも、ゲームファンの間では大きな話題となった。今回のEFFとESAの”論争”は、日本のゲーマーにとっても実に身近な問題だろう。
はたして近い将来、この”1201条”が修正されるのかどうか、今の時点ではまったくわからない感もある。この問題に関する公聴会が来月、ロサンゼルスとカリフォルニア、ワシントンで開かれる予定だ。いったいどんな話になるのか興味深いところだ。
(文/仲田しんじ)
【参考】
・The Register
http://www.theregister.co.uk/2015/04/11/eff_calls_for_games_dmca_exemption/
・The Daily Dot
http://www.dailydot.com/politics/eff-defends-video-game-preservation/
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引用元:http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0421/ota_150421_8230779492.html